最近、ゲーム業界で話題となっている「アサシン・クリード シャドウズ」は、戦国時代の日本を舞台にしたアクションゲームです。このゲームに登場する黒人侍、弥助（ヤスケ）の描写を巡って、大きな論争が巻き起こっています。

今回は、これに関連するさまざまな問題と、歴史学者トーマス・ロックリー氏の関与について詳しく解説していきます。

弥助（ヤスケ）は、16世紀の日本に実在したアフリカ系の侍で、ポルトガルから来た宣教師アレッサンドロ・ヴァリニャーニと共に日本に渡ったと言われています。

彼の存在は、当時の日本では非常に珍しく、彼の独特な外見と異文化的背景から多くの注目を集めました。弥助は、戦国時代の大名、織田信長に仕えていたとされ、信長から「侍」として迎え入れられたという記録があります。

ゲーム「アサシン・クリード シャドウズ」は、弥助を高位の侍として描いており、その描写に対して多くの批判が寄せられています。特に問題視されているのは、弥助の役割が誇張されている点です。

ゲーム内では、弥助が完全武装で村を歩き、村人たちが彼に頭を下げるシーンが描かれていますが、これが歴史的事実に即していないという指摘があります。

さらに、畳の扱いや家紋の描写、著作権違反や文化財の盗用など、さまざまな不正確さも批判の対象となっています。

トーマス・ロックリー氏は、日本の歴史やアフリカ系日本人に関する研究で知られる歴史学者です。彼の著書『信長と弥助 本能寺を生き延びた黒人侍』では、弥助を英雄的な黒人侍として描いており、ゲーム「アサシン・クリード シャドウズ」でもその影響が見られます。

ロックリー氏の研究や見解が、ゲームの歴史的描写に強い影響を与えているため、彼の意見が賛否を呼んでいます。

ロックリー氏の著書には、弥助が日本におけるアフリカ系侍の「草分け」であり、権威の象徴として利用されたという内容が含まれていますが、これが歴史的事実と異なると批判されています。ロックリー氏の描写は、弥助の実際の地位や役割を過剰に英雄化しており、これが文化的な誤解を生む一因となっています。

東京大学の岡美穂子准教授もこの論争に関わっており、ロックリー氏の研究に対する批判が不当であると主張しています。

岡准教授は、ゲームのフィクション部分については問題ないとしつつ、ゲームが歴史的事実を誤って描くことに対して懸念を示しています。

彼女の意見は、ゲームのフィクションと歴史的事実のバランスについての重要な視点を提供していますが、これもまた議論を呼んでいます。

ゲームの描写に対する批判は、単に歴史的な正確さを求めるだけでなく、文化的な配慮も求められているという点が重要です。ゲームが歴史的なキャラクターや文化を扱う際には、その国の歴史や文化に対するリスペクトを示すことが求められます。今回の「アサシン・クリード シャドウズ」の場合、ポリティカル・コレクトネスや文化的な配慮の不足が指摘されており、これが炎上の一因となっています。

今後、ゲームの発売や評価がどのように進展するかは注目されるところです。ゲームが歴史をどのように描き、フィクションと史実のバランスをどのように取るかが、今後の評価に大きな影響を与えるでしょう。ユービーアイソフトがどのように対応するかも含め、引き続き注目していく必要があります。

このように、ゲーム「アサシン・クリード シャドウズ」を巡る論争は、歴史的描写や文化的配慮、そして個々の研究者や専門家の影響が複雑に絡み合っています。これからの展開に注目しつつ、歴史や文化を尊重したコンテンツ作りが求められるでしょう。