稲生物怪録と朝霧の巫女。

今回は、広島県三次市を舞台にした漫画『朝霧の巫女』と、それに深く関連する妖怪奇譚『稲生物怪録』についてご紹介します。

『朝霧の巫女』は、宇河弘樹さんが描いた漫画で、2000年から2007年まで『ヤングキングアワーズ』に連載されていました。副題は『平成 稲生物怪録』で、その名の通り広島県三次市が舞台です。この記事では、その魅力と背景について詳しく掘り下げてみましょう。

【広島の妖怪伝説】『朝霧の巫女』と『稲生物怪録』の魅力を徹底解説!!

『朝霧の巫女』のあらすじ。

『朝霧の巫女』の主人公は、病弱な少年、天津忠尋(あまつ ただひろ)。彼は母親の置き手紙をきっかけに、広島県三次市に引っ越してきます。

そこで、彼は稗田三姉妹と出会い、妖怪と戦う日々が始まります。稗田三姉妹はそれぞれに個性豊かで、長女の倉子は高校の教師で稲生神社の巫女、次女の柚子は忠尋に恋心を抱く少女、三女の珠はしっかり者で少々おませな性格です。

物彼が三次市に来たことで、天狗の面をつけた怪人や化物に襲われる日々が始まるのですが、忠尋は稗田三姉妹と共に妖怪と戦います。

『稲生物怪録』の概要。

『朝霧の巫女』のモチーフとなった『稲生物怪録』は、江戸時代中期の1749年(寛延2年)に作られた絵巻物で、広島県三次市で実際に起こったとされる妖怪奇譚です。主人公は16歳の少年、稲生平太郎。彼は武士の子息で、ある日、隣家に住む相撲取りの権八と肝試しをすることになり、比熊山という山に登ります。そこから、不思議な出来事が始まります。

7月1日の深夜、大きな怪物が平太郎を襲い、それから1ヶ月間、毎日奇怪な現象に悩まされます。平太郎は勇敢に立ち向かい妖怪たちと戦います。この物語は、平太郎が体験した不思議な出来事をまとめたもので、後に多くの文人や研究者の興味を引きつけました。

稲生物怪録の詳細。

稲生平太郎が体験した30日間の奇妙な出来事は、まさに異常な連続でした。初日には一つ目の毛だらけの化け物に襲われ、3日目には天井から生首女が落ちてきたり、無数の瓢箪が降ってきたりします。しかし、平太郎は全く動じませんでした。

7日目には、大入道と格闘するために役所から助っ人が派遣されますが、槍を取られてしまいます。10日目には、平太郎のもとにやってきた客の頭が割れて赤子がわらわら出てきて、最終的には赤子が合体して平太郎に襲いかかります。こんなの文章で読んだだけだと、もうカオスすぎて何が起こっているのか分かりませんよね。

稲生物怪録の結末。

30日目に、平太郎の前に魔物の頭領、山本五郎左衛門が現れ、平太郎に小槌をプレゼントして終わります。

この物語は、平太郎が体験した不思議な出来事をまとめたもので、後に多くの文人や研究者の興味を引きつけました。江戸後期には国学者の平田篤胤によって広く流布され、明治以降も泉鏡花や稲垣足穂、折口信夫らによって翻案されています。

現代における『稲生物怪録』の影響。

21世紀に入っても、『稲生物怪録』は民俗学者や作家たちの間で関心を集め続けています。

谷川健一や荒俣宏、京極夏彦らも解説書を刊行しており、水木しげるも『木槌の誘い』で漫画化しています。広島県の三次市には『三次もののけミュージアム』という妖怪博物館があり、稲生物怪録に関する資料が展示されています。観光客も多く訪れており、現代でもその魅力は衰えることがありません。

まとめ

今回は、『朝霧の巫女』とそのモチーフとなった『稲生物怪録』について詳しくご紹介しました。広島県三次市を舞台にしたこれらの物語は、妖怪伝承として非常に興味深いものです。『朝霧の巫女』は、忠尋と稗田三姉妹の勇敢な戦いを描き、『稲生物怪録』は平太郎が体験した奇怪な出来事を通じて、人間の強さや勇気を伝えています。

これを機に、『朝霧の巫女』や『稲生物怪録』に興味を持っていただければ幸いです。広島県三次市を訪れる際には、ぜひ『三次もののけミュージアム』にも足を運んでみてください。妖怪たちの世界に触れ、平太郎や忠尋たちの冒険を追体験してみてはいかがでしょうか。

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